ミーちゃんとご褒美

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このやり方があながち間違っていないのは、悪役を作る事で闘志に変わるし、妄想好きも手伝ってメンタル的にもいい気がする。 「落ち着いたようだし練習に戻りますか、まだあの二人はキリが悪いようです」 という事は相手は朧……というか悪代官登場になり、時代劇だとそんなに強くない老人が多いが、一番強いのでタチが悪い。 「そんな気構えんでも、いきなり斬りはせんよ」 イナリが前を澄まして歩いてるので、見物ではなくパートナーとして参加してもいいようだ。 村人が二人がかりだろうと、本物の悪魔には痛くもかゆくもないといったところだろう。 信頼できる王子の存在は大きいが、エンジンがかかりすぎた場合は真っ先に止めに入る為、つなぎのポケットにスルメも用意してある。 「まずは意識を集中し、チカラを出すところから始めましょうか」 ヨガの先生みたいな優しい口調だが、一定の距離を保ちいつでも攻撃できますと、追加の言葉まで深読みしてしまう。 イナリはお座りして待機してくれているが、私はビクビクしながらも、身体にチカラが集まるのを感じていた。 悪代官は年貢を下げろと訴えても聞き入れてくれず、城まで直談判に出向いた貧乏村民をすんなり帰しそうもない。 『であえっ』と手下を呼ぶかもしれないし、武器すら持たない村人は、振り絞ってでも何かを出さないと即刻首を落とされそうだ。 「貧しい者の暮らしを妨害する代官に天罰を……」 炎が身体から少し広がるのは分かるが、これからミーちゃんモードに変換しなければならない。 「そんなに意識しなくてもよい、悪代官から攻撃してみよう」 「――えっ?!」 勝手に心を読むなと叫びたいが、先手を打つと宣言されたので思い切り壁を作るしかない。 稲膜ではなくミーちゃんモードでバリアを張るのは慣れてないが、当たると終わりだと思うと手を前に組み、助けて下さいと祈るように念じた。 朧は手のモーションすらないが、強い風圧を感じるので反射的に身体が動くと、鶸萌葱色の結界が張られていた。
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