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「なるほど……ミーちゃんもいいかも」
バチバチと火花が所々に出ているのは、外の攻撃をカバーした証拠なので上手くいったのが自分でも分かる。
後は押しつぶされず頑丈になるよう練習し、これを出したままの状態で攻撃しなければならない。
イナリが足元に移動したので『タツ、次はこちらの番だ』と母の真似すると、その気になったのかドヤ顔を返してきた。
「悪代官――っ、年貢を下げろ――っ!」
放出するイメージで手を翳すと、それまでは温かい雰囲気の鶸萌葱の炎だったが、朧の周りを囲んで火の玉のように浮かんでいる。
悪代官も結界を張って防御はしつつ、動きを封じる為に技をかけた……というか、逆さづりにされ早く解かないと血が上りそうだ。
「奇妙な魔法使いやがって」
逆から見える朧の姿は、火の玉に囲まれ魔界の住人のようだが、倒す気でかからないと年貢どころか命も危ない。
「般――っ!」
気合いで大きな声を出すと、代官の頭上の火の玉は大蛇に変化を始め、離れた場所に避難したかったが逆さ状態が解けない。
「物騒なモノだしてきますなぁ」
不気味な炎の大蛇が表れても、嬉しそうに口角を上げる代官に勝てる気が全くしない。
それでも心の中で『行け』と念じると、大蛇は軽い竜巻を起こしながら、朧ごと巻き込み天高く登ろうとしてるように見えた。
目を凝らしてみるとデカい大蛇の口元は、刀のような鋭い牙があり、負けじと魔物感を出している。
渦はどんどん大きくなり大蛇が一定の距離を上った所で、王子が結界からタタッと出て前足を舐めた。
ドドーンと大きな音がしたと同時に吹き飛ばされ、逆さづりからは解放されたが、すぐに稲膜で身を守るのが必死だった。
「――今、雷落ちたよね」
朧の姿もなく滋さん達も避難していたが、イナリはドヤ顔でこちらに歩いて来て、どう褒めてくれるのかと言わんばかりだ。
「えと、カッコよかった……スルメ食べる?」
食べる姿はいつもの王子だが、マグレで出した大蛇は本人ですら慣れてないのに一回で華麗なコラボを決める辺り末恐ろしい。
いつも母と時代劇を見て真似してるだけなのに、本番でこんなキレッキレの技が出るのは、プロの俳優より凄いと思えた。
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