ミーちゃんとご褒美

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「……村人とそのペットにしてはスペック高すぎじゃろ」 「雷落とされても平気な魔界の悪代官に言われたくないです」 説明しなくても妄想は読まれているので、イナリから視線を逸らさず言い返した。 「色んなチカラを持ち羨ましいが、早めに使いこなせるようになって欲しいのぅ」 言わずと知れた『怪かし対策メンバー』として役に立てと、次の圧力をかけてくるのが気に入らない。 「ホント狐って褒めるという事を知らないですね……次々とハードル上げるドSなんですから」 フッと笑みを漏らす朧だったが、トレーニングレベルが以前に比べ上がっているのは自分でも気づいている。 いずれこの悪代官でないと練習出来ない化け物にはなりたくないが、仕事を続ける以上はそんな事を言ってられない。 「今年もケーキを買う為、せっせと働くんじゃろ」 「当然です、お金がないと餅も買えないし、ウチの母達はプレゼントも期待してますから」 今年もあと僅かだと実感させられるが、年越しは社長とのゲームが待っているし、あっという間にその日になりそうだ。 来年はセールで服でも見ようと別の事を考えていると、朧から妙な提案を持ち掛けられた。 「泥臭い戦いばかりだと飽きると思うてな、バイトがてら面白い遊びをしてみんか?」 すぐに返事を出来ないのは当然だが、悪代官からの誘いはウチの社長と同じくらい危険な匂いしかしない。 滋さんに確認を取りたいがまだ桜舞と戦ってるだろうと視線を向けると、背後に気配がしてビクッと肩が揺れた。 「ダメだよ、ウチのホープを勝手に雇うの止めてもらえる?」 「いや、これも訓練の一環で尚且つ褒美がある方が百合にやる気も出ると思うて」 内容を確認する為朧に近づき、分かりやすく耳打ちするので、気になって凝視していた。 「まぁ……それくらいなら」 あっさりと承諾され逆に不安になるが、一旦汗を洗い流して休憩し、リビングに集合と残して朧は姿を消した。 「どうしよう……魂燃やした遺体の処理係だったら」 都合よく双棒も持っているし、灰にするのは簡単だが、そんな使い方を親族が許す訳ないと打ち消しながら泊まってる建物を目指した。
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