ミーちゃんとご褒美

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シャワーと着替えを済ませイナリにオヤツをあげると、コーヒーを飲みマッタリモードになりつつあった。 とりあえずヒントを得たという事で、職場に戻りたいのに、あの代官は時間ギリギリまで何かをさせるつもりだ。 死にさえしなければ細々と勤めたい意識の低い新人なのに、何度も三途の川を渡りかけこのような展開になっている。 皆よく続いてると感心するのは、半年くらいで辞めてもそこそこお金を稼げるし、次の仕事を始めるまでのつなぎには十分すぎる。 私達は学もなくコミュニケーションスキルが異常に低いので、普通の仕事に就くのが難しいというのもある。 「待てよ……ウチのリーダーも無理かも」 我が一家のように貧乏ではないが、考えてみるとイザリ屋が過ごしやすいのは、同じタイプの集まりだったと笑みが漏れた。 「一人で笑顔って不気味だよ?」 「……いや、天井からヌッと出て来くる方がずっと怖い」 桜舞が座禅を組んだ姿勢で宙に浮かんでいたが、何度か経験済なので、驚かない私もノーマルから遠のいてる気がする。 「着替えを持って来てあげたんだよ」 「有難う……でもドアをノックしてくれたら、居留守も使わず出るから」 風呂敷包みを開けると食べ物かと王子が近づいたが、衣類と分かり興味なさそうに毛づくろいに入った。 「イナリの分もあるよ」 私の背丈のマント……いや魔法使いがつけてそうなローブと言えばいいのか、パッと見はハロウィンを思い出すような衣装だ。 同素材の黒のロングワンピの下にレギンスは違和感もあるが、聞こうとすると桜舞の姿はなく渋々着替えに入る。 「わぁ、王子は何着せても可愛いね」 イナリは小さなマントにとんがり帽子だが、金色の星があしらってあり、私より華やかな気がした。 部屋を出ると朧は和装の訪問着で、桜舞は私と同じようなマントに金髪のズラをつけていたが、似合っているのが腹立たしい。 「百合はコレつけて」 淡いピンクのズラと頭から被るベールを渡されると、ただの怪しい人か、偽魔法使いにしか見えなかった。
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