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バイトってもしかしてコスプレなのかと予想してみたが、朧から聞いた内容は全く違っていた。
「嘘をついてるか判断をして貰いたい」
「女の勘……はもう少し歳を重ねた方が洗練されると思います」
「いや、そういう使い方じゃない……まぁ早速行こうかの」
桜舞に腕を出され、朧は滋さんとペアを組むようだが、このパターンは瞬間移動だと思われるので気分が悪くならないようグッと目を瞑った。
以前不意打ちをくらって吐きそうになったので、イナリをマントに包み、桜舞の腕をしっかりと掴むのも怠らない。
そっと瞼を開けると大きな建物の入り口のようだが見た目といい、入場券を買うカウンターが十か所以上並んでいる状況といい、遊園地だと思われる。
「ゴッズフォックス……アドベンチャーワールド?」
「さよう、ここは見た通りの遊園地じゃよ」
狐の世界にこんな場所があったのも驚きだし、生まれてからこんな大きなレジャー施設に来たのは初めてなので、瑠里も一緒だったらと興奮気味だった。
ここは狐人間の重要な会議が開かれる隠れ蓑的な場所だったらしいが、思わぬ成功を収め今は力を入れてるらしい。
知らない人にとっては楽しい夢の国だが、一部の人には重要な場所で、無駄もなく目くらましにもなる狐らしい賢い考えだ。
テーマは冒険でそれにちなんだ乗り物や、狐のキャラをふんだんに使い、ショーやアトラクションの他グッズも沢山あるらしい。
バイトなので従業員通路を渡るようだが、ドアを開けた途端に狐の面を被った警備がいたのでドキッとした。
『だからなんで狐が狐の面被ってんだよ!』
思わず声に出そうになったがグッと堪え、持ち物チェックをされて名簿に名前を書く辺りはパン工場と似ていた。
仮の通行所を渡して貰い、帰りには返却して下さいと注意事項を言われてる間も、面が気になり顔周りをガン見していた。
話しやすいよう鼻までしかないが、口の周りには本物の狐のような髭が生えているので、この人の見た目は顔が狐で身体が人間のタイプのキツネ人間だ。
なら尚更面を被る意味がないだろうと疑問が浮かび、結果凝視してしまったが、咳払いをされ俯いて誤魔化した。
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