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バイト先で女子話をウンザリする程小耳に挟んでいたので、大体の予想はつくし面倒だと思っていた。
「一般も混ざるかもしれないけど、そんな時は返事求めないから」
じゃあどんな時だと一気に不安になったが、狐もウチの社長と同じで勿体つけるのがお好きなようだ。
中に入ってしまったので後に続くと、占い師ごとにブースが区切られ、隣の声があまり聞こえずゆったりとしたスペースだ。
想像だと怪しいカーテンの向こうに水晶やタロットと魔女みたいで綺麗女性がいると思っていたが、話し声の端々がオバサン口調なのでハズレだった。
占い師のブースに写真が貼ってあり全員男性……だと思われるが、面をつけてる人に至っては判断しづらい。
桜舞の写真もフードを被った金髪までは同じだが、顔の部分は上手くぼやかしてあった。
「これ、写真の意味あるの?」
「フェイクで飾ってるだけで、常連は狙ってここへ来るから関係ない」
ふぅんと頷き桜舞のブースに入ると、綺麗な布の小さな座布団の上に水晶玉をセットしていた。
透かし模様のライトを照らし、薄暗さが雰囲気を演出している。
イナリは水晶の隣にクッションが用意され、お澄ましして座わり、私は桜舞の少し後ろの椅子で待機というフォーメーションだ。
ぶっちゃけ王子を餌に客を釣ろうとも思えるが、可愛い姿を他の人にも見て貰いたいという親バカ根性もあり黙っていた。
背後にはドアがあり、朧はそこから奥の部屋に移動したが、何をするのかは教えてもらってない。
桜舞は慣れた手つきでアロマキャンドルを灯し、いい香りで眠たくなりそうだが、ガムも噛めないので耐えるしかなかった。
「桜舞……休憩は貰えるんだよね」
「ここではホットケーキと呼んでくれる?写真の下に名前書いてあったでしょ」
「――えっ?!」
しっかりと見てなかったが、占い用の名前を持つなんて本気度が違うと一瞬だけ感心し、ネーミングが微妙なのは言わないでおいた。
「後ろ控えてる先輩はバター、イナリはホイップ、百合はシロップにしたから」
『全部ホットケーキ関連やないか!』
芸人みたいな名前でイラッとするが、イナリのホイップと私のシロップは、単品だと気づかれないので幾分マシかもしれない。
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