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占い助手シロップ
後ろに控える朧はよくバターで納得したと疑問だが、庶民的で親しみを込めたのかもと強引に納得した。
少しすると隣のブースに女性客二人が入るのが見え、ボソボソと声がするので、ローブの紐を結び直し身なりを整えておいた。
桜舞は両腕を組み目を閉じていたが、明らかに寝てるとしか思えないので、客の気配を感じたら叩き起こしてやると睨みを利かせていた。
扉の開く音と写真のパネルの前で立ち止まったのを感じると、桜舞……いやホットケーキ先生を揺すったが気合いは全く入ってない。
「いや、まだ来ないよ……ここはそんなすぐ客入らないから」
二度寝を決めこむ桜舞に、起こし役で雇ったのかと呆れていると、ホイップもウトウトしてるので吹き出しそうになった。
座り始めて三十分ほど経過したが、他のブースはパラパラと客が来るのに、ここだけは葬式のようにずっと静かで一番奥なのは救いな気もする。
手前だと客が居ないとすぐバレるし、占い師自体が寝てるブースなんて、絶対に当たらないと更に遠のきそうだ。
私だってお金を払って占って貰うならホットケーキは避けていたと思う。
一時間が経過し気分転換にトイレに行こうかと考えていると、桜舞があくびと伸びをして起き上がった。
イナリも少し乱れた尻尾を毛づくろいしているので、もしかしたら初のお客かもしれない。
椅子に座り直して待機していると、ゆっくりとブースに近づく気配を二つ感じ、恋愛相談かと予想したがすぐに覆された。
ガタイがよくゴリラか猿なのか不明だが、ナイロンのジャンバーを来た男性が目の前の椅子に腰を下ろす。
こんな奴等がウチのブースで何を占いに来たのか分からないが、サングラスを外した顔は目線を合わせたくない程怖い。
ホットケーキは気にも留めず何を占いましょうと聞いているが、私は万が一喧嘩になったらイナリを守ろうと膝の上で拳を握っていた。
「ああ、大丈夫ですよ、この子達は助手で外部に漏らす事はありません」
イナリはチヤホヤして貰えないと分かったのか、寝そべってチラ見に変更し、媚びを売る気は全くなさそうだった。
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