101人が本棚に入れています
本棚に追加
占いの館なのに相談や胸キュンムードではなく、虎の世界さながらの喧嘩が始まりそうな険悪な空気だ。
客商売なのにしたてに出ないホットケーキが悪いのは分かっているが、私のせいも少しあるので注意もしづらい。
何を占いましょうかと先程と同じように問う桜舞は、空気を読まない雰囲気が職場の死神……いや、立花の親族とリンクしている。
蛇はポツリと話を始めたが視線はこちらに向けていて、確信はつかず遠回しな言い方をしていたが、徐々に気分が悪くなりだした。
『なんか……気持ち悪い』
目の色が角度によって変わり、暗示でもかけられたように、蛇の顔が五つぐらいグルグル回って見える。
乗り物酔いに似ていたが、同時に奇妙な声が頭の中でこだまするので、牛の世界と同じように何か技をかけられたかもしれない。
占いに来ただけの客ですら気を抜けないなんて聞いてないし、こんな場所で大騒ぎする訳にもいかないので一人でパニックになる。
蛇も不気味だしこのまま呪いの技にかかると、いいように利用されそうだが、ウチにはもっと腹黒の大蛇のキセロが居る。
グループで分けると同類だし、執念深さで言えば妹とも重なる……という事は負けてなんかいられない。
『腹黒大蛇系統に負けてたまるか!』
蛇から大蛇に考えをシフトした途端、身体が動くようになったが、相手にバレないようにジッとしておき口だけ開いた。
「あの、相談は先生にお願いします……どうしてもという時は別料金いただきます」
お化けでも会ったように目を見開かれたが、鋭い眼差しのままなので、お前の方が怖いわと暴言を吐きたいのをグッと堪える。
ホットケーキが笑みを向けるので、客の頭上を見ると『偽』という文字が浮かんでいて首を横に振った。
「嘘は困りますね、罪を犯すのは勝手ですが……捌きは下りますのでご用心を」
「なっ、失礼な!ただの占いくんだりで偉そうに」
立ち上がった男性二人に笑顔を向けると、助手も優秀なので小細工は通用しませんと嫌味を言いお辞儀をしていた。
蛇人間が帰ると桜舞は違うケーキの箱を開けていたが、私達にも一つずつ分けてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!