占い助手シロップ

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「どうぞ、お掛け下さい」 焼きそばの袋を両手に提げた女性達が腰を下ろしたが、少し前にバイトした豚の世界を思い出す。 美味しいと評判なのとサーファー達の聖地というのもあり、毎日飛ぶように売れていた。 豚の世界を連想させる恰幅のよさがあり、濃い赤のワンピースにハット、相棒も白のパンツにピンクのニットで派手めな格好だ。 「恋愛運を見て貰いたいな」 赤ワンピがそういうと、聞いてもないのにピンクニットがこの子モテるからと自慢話が入ってくる。 女子は結構占い好きが多いようだが、殆ど話しを聞かずいい事しか耳に入っていない。 休憩室でよく小耳に挟んでいたが、自分の中で勝手な妄想回答は浮かんでいて、そこまでのプロセスを楽しみ相談という名目で披露する機会を待っている。 友達は上手く相槌を打っているが、途中から自分の話に切り替えていくので、結局誰も真剣に聞いていない。 派手でボッチャリした体型は豚の世界っぽいが、人に近いのでカバと言われても納得がいく。 「数人で悩んでる……といった感じでしょうか」 一応きちんと水晶を見ているホットケーキに驚いたが、その言葉は胡散臭いと思っていた女子達の心を掴んだようだ。 「分かりますぅ?やっぱモテ層が出てるのかな、言い寄られてる人と……あっ、最近ストーカーがいて困ってるんです」 「あの人ちょっとヤバい気しない?」 二人は同じ職場か学校か知らないが、仲がいいらしく一緒に行動する事が多いのか、相方も知ってるようだ。 恋愛相談からストーカー話にシフトしているが、それが女子なので仕方がない。 ホットケーキは一般の占いもした事があるようで、別に驚く事もなく話を合わせている。 結局気になってるのはストーカーで、色んな場所で視線を感じたり、帰り道が怖い等……沢山クレームをぶちまけてきた。 「一度警察組織に相談されてみてはいかがです?」 「ダメだよ相手強そうだし、返り討ちに合うと思う……ボディガード雇いたいくらいだよ」 ギュルルゥと大きな腹の音が鳴り、ビクッとすると赤ワンピが照れ笑いで誤魔化していたが、ウチの王子もハモッていた事には気づいてないようだ。
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