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「終わったら食べようと買ったんだけど……我慢出来ないから少し味見していい?」
ここは飲食禁止だと思うが、ホットケーキは別にいいですよと気軽に言ったので、赤ワンピは嬉しそうに私達の分まで渡してくれた。
遠慮なく頂きますとスプレーを振り、まずは王子が食べやすいようパックを開けておいた。
屋台の焼きそばが大好きな私も箸を割ったが、ホットケーキはもう食べ始めていて、すする音が鳴らないよう遠慮気味なのが笑える。
豚の世界とまでは言わないが、入った時から気になっていた品を貰えたいう嬉しさもあり、余計に美味しく感じた。
「ホテルチェーンは儲かります?財産狙いで近づいて来る輩には気をつけて下さい」
「えっ、分かるの?!」
「ふぁ……あとストーカーですが、近々何かをやらかしそうなので、ボディガードは早め……ひ」
食べながら予言を伝える大柄な占い師の話でも真面目に聞いている二人は、もう随分前に完食している。
一気に三パックくらい食べそうだったが、さすがに今は遠慮してるようだ。
私は食べるのを一旦止め、飲み込んでから言って下さいと注意してから口に運び出した。
助言を聞いてからの二人はかなり不安そうで、いきなり雇えと言われても、何処が信用出来るか分からないと別の問題が浮上した。
ホットケーキは少し考えてからこちらを見たので、嘘は言ってねえだろと怪訝そうな顔を返すと、ポンと分かりやすく手の平を叩いていた。
「今日だけであれば、ウチの助手を付き添わせましょう」
「――はぁ?!」
客より先に驚いた声を出すと、少しお待ち下さいねと微笑んでから、ホットケーキを後ろの部屋に引きづり込んだ。
「聞いてねーんだよ、気軽に請け負うんじゃない」
「みぞおちに拳を入れながらクレーム言わないでよ、いい思いも出来るし誰も損しないから」
血生臭い事を未然に防げるし、美味しい物も食べれて練習にもなると、殴られながらアピールするホットケーキに根負けした。
「帰るまでの間だけですよ……」
部屋を出るととんがり帽子を外し二人の前に現れたが、何故かホットケーキと朧……いや、バターまで出てきたので振り向いた。
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