占い助手シロップ

7/20
前へ
/131ページ
次へ
「終わったら食べようと買ったんだけど……我慢出来ないから少し味見していい?」 ここは飲食禁止だと思うが、ホットケーキは別にいいですよと気軽に言ったので、赤ワンピは嬉しそうに私達の分まで渡してくれた。 遠慮なく頂きますとスプレーを振り、まずは王子が食べやすいようパックを開けておいた。 屋台の焼きそばが大好きな私も箸を割ったが、ホットケーキはもう食べ始めていて、すする音が鳴らないよう遠慮気味なのが笑える。 豚の世界とまでは言わないが、入った時から気になっていた品を貰えたいう嬉しさもあり、余計に美味しく感じた。 「ホテルチェーンは儲かります?財産狙いで近づいて来る輩には気をつけて下さい」 「えっ、分かるの?!」 「ふぁ……あとストーカーですが、近々何かをやらかしそうなので、ボディガードは早め……ひ」 食べながら予言を伝える大柄(おおへい)な占い師の話でも真面目に聞いている二人は、もう随分前に完食している。 一気に三パックくらい食べそうだったが、さすがに今は遠慮してるようだ。 私は食べるのを一旦止め、飲み込んでから言って下さいと注意してから口に運び出した。 助言を聞いてからの二人はかなり不安そうで、いきなり雇えと言われても、何処が信用出来るか分からないと別の問題が浮上した。 ホットケーキは少し考えてからこちらを見たので、嘘は言ってねえだろと怪訝そうな顔を返すと、ポンと分かりやすく手の平を叩いていた。 「今日だけであれば、ウチの助手を付き添わせましょう」 「――はぁ?!」 客より先に驚いた声を出すと、少しお待ち下さいねと微笑んでから、ホットケーキを後ろの部屋に引きづり込んだ。 「聞いてねーんだよ、気軽に請け負うんじゃない」 「みぞおちに拳を入れながらクレーム言わないでよ、いい思いも出来るし誰も損しないから」 血生臭い事を未然に防げるし、美味しい物も食べれて練習にもなると、殴られながらアピールするホットケーキに根負けした。 「帰るまでの間だけですよ……」 部屋を出るととんがり帽子を外し二人の前に現れたが、何故かホットケーキと(おぼろ)……いや、バターまで出てきたので振り向いた。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加