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「いつからつき合ってるの?」
「大学一年のときからです」
「けっこう長いね。僕も、もっと早く箱崎さんと出会いたかったな」
ぐっと顔を近づけてくるので、一歩引いた。
ここまでされたら、いくら恋愛経験の乏しいわたしでも、さすがに察しがつく。
「……やだ、からかわないでください」
会場のざわめきに救われる思いだった。こんな気まずいなかで、どうにもいたたまれない。
すがるように薬指の婚約指輪を撫でると、志摩さんもそれに視線を移した。
「困らせて、ごめん。ここまで言うつもりはなかったんだけど、その指輪を見てたら、なんか悔しくなってね」
「志摩さん、わたしは……」
「わかってる。じゃまするつもりはないんだ。まあ、こんな話をしてる時点で十分じゃまをしているんだけど」
志摩さんはカウンターに置かれたグラスを手に取ると、ワインを半分ほどあおった。喉ぼとけが上下に動いて、コトンとグラスがカウンターに置かれる。うなだれるようにため息をつき、目も少しうつろだった。
もしかして、酔っているのだろうか。
志摩さんがいきなり告白してきたのは、アルコールが原因なのかもしれないと思った。オレンジ色の照明のせいで、顔色ははっきりとわからないけれど、そういえば赤いような気もする。
それならば、この状況も説明がつく。職場で常に親しげな笑顔を向けてくる人なのに、必ず一歩引いてくれて、わたしのプライベートに深く踏み込んでくることはなかったから。
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