4.ふたりの間の不協和音

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「あのさ、原因は僕にあるのは重々承知しているんだけど、夫婦喧嘩はそれぐらいにしなよ」  わたしたちの言い争いを見かねた志摩さんが、苦笑しながらもなだめようとしてくれている。  でもわたしにだって言い分はある。 「これは犬も食わないようなどうでもいいことじゃないんです! あんな言い方は理不尽です。ちゃんと訂正してもらわないと!」  簡単につけ込まれるとかまんざらでもない顔とか。まるでわたしがだらしないような言い方なんだもん。それが婚約者に向かって言うセリフ? 「理不尽かもしれないけど、それが日比谷さんの本心だと思う?」 「え?」  言われてハタと気づく。  別に本心と思っているわけじゃなくて……。  どうしてわたしを怒らせるようなことをわざわざ言うんだろうと、そういうのが悲しいと思ったんだ。 「ほら、本心だなんて思ってないだろう。こう考えてみたら? 自分の彼女に下心満載の男が寄ってきてるのに、怒らない彼氏のほうがショックじゃない?」 「それはたしかに……」  そこはやきもちを焼いてほしいかも。 「こんなことを言うのは悔しいけど、言いたいことを言い合えて、ふたりは理想的な関係だと思うよ」  志摩さんの言葉に一気にクールダウン。  航もわたしも相手をどうでもいいと思っていたら、こんなにムキになっていないよね。この場合、好きだからこそ、言い争になってしまった。
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