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部長は難しい顔で腕組みをしながら「今日からお前ら二人バディを組め」と、言い放った。 「え?」 ちょっと待って。今、何て言った?宝来さんと僕でバディを組め? 「聞こえなかったのか?」 部長が不機嫌そうな顔で僕を見る。僕は耳と尻尾を忙しなく動かしながら、そんな部長に詰め寄った。 「ぼ、僕にはカオさんが居ます。僕のバディはカオさんです」 死神は通常、二人一組で行動する。宝来さんは城戸くんが異動になってしまったから、ひとりだけど、カオさん・・・僕にはちゃんと、松前薫さんが居るのだから、僕が宝来さんと組むのはおかしい。 詰め寄る僕の顔に、用紙が一枚突き付けられた。僕は首を傾げながらもそれに目を向けた。 診断書と大きく書かれた文字に目を剥いた。それは、カオさんの診断書だった。 心身衰弱が著しく、このまま今の生活を続けることは困難だと判断した旨が書かれてあった。診断の結果はレベル4。 僕は眩暈を感じて頭を抑えた。昨日、カオさんは半休を取った。用事があると言っていたけれど、病院に行くためだったなんて気付かなかった。 だって、お疲れさまでしたと、帰るその時まで、いつものようにパワフルなカオさんだったから。 「今日届いた。仕事の異動は希望していないようだが、医師の了承がおりるまでは、仕事に復帰出来ない。宝来のバディも回想に異動になったからな。丁度いいだろ?」 いいだろ?と言われて素直に頷ける訳がない。僕はこの人に嫌われている。僕だってすごく苦手なんだから。
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