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一件目の仕事場は、二車線の大通りだった。車も人も多い交差点で事故は起きる。 車との接触で起きる死亡事故の案件はかなり多い。しかも突然の出来事だから、対象者は自身の身に何が起こったか分からず呆然としているか、そのまま関係がないとばかりに普段の生活に戻ろうと行動を起こしたりもする。 今、君は事故に遭って死んだんだって説明されても、大抵の人は認めない。何かの間違いだと、逆に僕達を不審者のような目で見たり、ひどい場合は罵られたりもするんだ。 まあ、気持ちは分かるけどね。突然現れた黒ずくめの怪しい二人連れに、警戒するなって方が難しいだろう。しかも、コスプレかと見紛う格好で真面目な顔をしたって、信用出来ないと思う。 それでも仕事だから回収はきっちりするんだけどね。 「10時30分だ」 宝来さんが時間を読み上げる。僕はピコピコと可愛いリズムを刻み始めた交差点に目を向けた。車が停車し、歩行者が横断歩道を渡り始める。 「ーー5秒経過」 平穏な日常が目の前で繰り広げられる。このあと、直ぐにそれは崩されるのだけど。 「ーー10秒」 感情を伴わない声でカウントをする宝来さんを見上げた。黒いサングラスをかけたその目は右腕にはまった時計を凝視する。左手には鞘に納められた刀。黒いスーツの上下。 僕の手にあるのは身長より大きな鎌。頭に耳を生やし、今はコートに隠れて見えないけど、尻尾だって生えている。 日常の中の非日常に居る僕ら。どうしたって相入れることの出来ない現実の世界に憧れなんてないけど、あやふやで不確かな存在なのだと、ここに降り立つ度に思ってしまうんだ。 僕達は何のために存在しているの?と。
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