回収係になりませんか？

始まり

僕はいつ生まれたのか分からない。気が付けば、小さな腕に抱かれていた。
その小さな人は、僕にシロと名前を付けてくれた。ぎゅっと抱きつかれて一緒に眠った。腹が立つと癇癪を起こしたように、僕を床に叩きつけ足で踏みつけた。でも、母親に諌められ直ぐにごめんと謝って抱きしめてくれた。

痛みは感じない。だって僕はぬいぐるみだから。目が取れたって、ピンと立った耳が取れたって、ふさふさの長い尻尾が取れたって、痛くはなかった。

でも、その子が新しいオモチャを買って貰って、僕に見向きもしなくなった時は、痛みなんて感じないはずの胸が、苦しくなった。
部屋の隅でその子が違うオモチャで遊ぶ場面を見るたびに、片方だけぶらんとぶら下がった目から涙が出そうな気がした。

僕たちはオモチャだから、いずれは飽きられ捨てられる運命だって知ってる。どんなに可愛がって貰っても、新しい仲間が来ればその子に気持ちが移って、忘れられてしまうんだ。

気まぐれに愛されて気まぐれに捨てられる。
僕はぬいぐるみだから仕方ないんだ。