1

21/37

233人が本棚に入れています
本棚に追加
/153ページ
「・・・本当に?」 「ああ、本当だ。だから、落ち着け」 兼松さんは疑うような目で宝来さんを見てたけど、やがてオズオズと頷いた。 「先ずは、自分の死を受け入れろ。話はそれからだ」 「そんなこと、出来ない」 「出来なくてもやるんだ。・・・彼氏に会いたいんだろ?」 「・・・認めなきゃダメなの?」 不安に満ちた目が悲しみに彩られた。 「ああ。辛いかもしれないが、現実をちゃんと受け止めるんだ。・・・慰めにもならないが、人はいずれ死ぬ。それが早いか遅いかだけの違いだ」 生真面目な顔で諭す宝来さんに、彼女は泣き笑いのような顔をして「それ、全然慰めてないから」と言った。 「すまん」 困った顔をした宝来さんに「本当に会わせてくれるのね」と確認する。 「ああ。本当だ」 力強く頷く宝来さんを黙ったまま見つめたあと、彼女は頷いた。 宝来さんは僕を振り返り「回想に連絡」と指示を出す。僕は頷きボタンを押した。 「回想係へ」 直ぐさま「はい、回想係、都築でーす」と、緊張が一気に弛緩する声が聞こえてきた。その声を聞いた僕はホッと息を吐き出した。 「・・・都築さん」 都築さんは不思議な人だ。その声を聞くだけで、もう大丈夫だと安心してしまうのだから。 「シロ?仕事か?」 「はい。お願い出来ますか?」 「直ぐに行く」 僕は対象者の名前を伝え通話を終える。 「すぐに来るそうです」 宝来さんが頷いた。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

233人が本棚に入れています
本棚に追加