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「・・・本当に?」
「ああ、本当だ。だから、落ち着け」
兼松さんは疑うような目で宝来さんを見てたけど、やがてオズオズと頷いた。
「先ずは、自分の死を受け入れろ。話はそれからだ」
「そんなこと、出来ない」
「出来なくてもやるんだ。・・・彼氏に会いたいんだろ?」
「・・・認めなきゃダメなの?」
不安に満ちた目が悲しみに彩られた。
「ああ。辛いかもしれないが、現実をちゃんと受け止めるんだ。・・・慰めにもならないが、人はいずれ死ぬ。それが早いか遅いかだけの違いだ」
生真面目な顔で諭す宝来さんに、彼女は泣き笑いのような顔をして「それ、全然慰めてないから」と言った。
「すまん」
困った顔をした宝来さんに「本当に会わせてくれるのね」と確認する。
「ああ。本当だ」
力強く頷く宝来さんを黙ったまま見つめたあと、彼女は頷いた。
宝来さんは僕を振り返り「回想に連絡」と指示を出す。僕は頷きボタンを押した。
「回想係へ」
直ぐさま「はい、回想係、都築でーす」と、緊張が一気に弛緩する声が聞こえてきた。その声を聞いた僕はホッと息を吐き出した。
「・・・都築さん」
都築さんは不思議な人だ。その声を聞くだけで、もう大丈夫だと安心してしまうのだから。
「シロ?仕事か?」
「はい。お願い出来ますか?」
「直ぐに行く」
僕は対象者の名前を伝え通話を終える。
「すぐに来るそうです」
宝来さんが頷いた。
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