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「誰が来るの?」 不安に揺れる彼女に「お前の願いを叶えてやれる奴を呼んだ」と、宝来さんが説明する。 「俺たちにその力はないから、そいつに頼んでやる」 少しぶっきらぼうだったけど、落ち着いた声音の中に優しさが滲んでいる。兼松さんもそれを感じたのか、ホッとしたような顔をした。 そんなやり取りを交わしていると、都築さん達が到着した。隣に立つのは、バディを組む橋詰さんだ。 都築さんは僕と宝来さんを驚いた顔で見た。 「珍しい取り合わせだねー。いつからシロのバディは宝来さんになったの。カオリンは?」 「カオさんはしばらくお休みです」 「何で?」 「・・・診断書が提出されたんです」 僕がそう言うと、都築さんは目を瞠り、何故か宝来さんへと視線を向けた。橋詰さんも倣うように宝来さんを見るから、僕も首を傾げながら宝来さんへと視線を移した。 みんなからの注目を平然と受け流し、宝来さんは都築さんを見返した。しばらく見つめ合ったあと、都築さんが「なるほど?」と、何やら納得したかのような顔をして、さっきから完全に置いてきぼりになっていた兼松さんへと顔を向け笑みを浮かべた。 目尻の下がった優しげな顔が、更に柔らかく綻ぶ。緊張に顔を強張らせていた兼松さんも、ぎこちなくだけど笑みを見せた。 「彼女に与えられた時間は?」 「48時間です」 「了解。ーー初めまして、都築と申します。隣に居るのは橋詰です。あなたの大切な願いを叶えるために参りました」 都築さんがニコリと笑うと、彼女も嬉しそうに笑い「よろしくお願いします」と、頭を下げた。
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