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振り返る僕に、辰さんがニヤニヤ笑いを向ける。意地の悪い顔が憎たらしい。
「僕に直接関係のない話だから何とも思わないです」
「じゃあ、関係あったら?」
関係があったら?僕は辰さんの意図が掴めずに眉を顰めた。
「自分の恋人が嫉妬深い奴だったらって話」
僕の恋人が?
「ーー居たことがないので分かりません」
「えっ?ないの?」
目を丸くする辰さんに、僕はため息を吐き出した。
「忘れているようですが、僕はぬいぐるみだったんです。恋人なんて出来るはずがないでしょ」
「あーー・・・そこは、ほれ、想像で?」
ほれ想像でって言われても・・・。僕は辰さんから視線を逸らし、さっきからずっと黙ったままでいる宝来さんを見上げた。
嫉妬深いらしい宝来さんが僕の恋人と仮定して・・・素直に嬉しいと思うのは間違っているのだろうか。だって、自分の好きな人が自分に対して、執着や独占欲を露わにしてくれているってことだよね?
嫉妬しているイコール、自分だけを見て欲しいって方式は成り立たないかな。
僕は今まで、誰からも嫉妬って感情をぶつけられたことがないから、そんな風に思ってしまうのかな。
移ろいやすい愛情しか向けられたことがないから、憧れているのだろうか。
僕は考えれば考えるほど分からなくなってしまった。
考え込む僕を、宝来さんが見下ろした。視線がかち合い、僕はビクッと体を震わせる。
「シロちゃん、そんなに怯えなくても大丈夫だから。いきなり襲い掛かったりしないから」
辰さんに目を向ければ、ね?と笑う。
「別に・・・怯えてる訳じゃないです」
「・・・そう?その割には、耳が倒れてるけど?」
指摘されて、僕は両手で耳を隠した。
「見ないで下さい。エッチ」
「俺がエッチなら、マサを凝視してたシロはドスケベだな」
「違います」
僕はドスケベってなんだと思いながら、ふんっと鼻を鳴らして前を向いた。丁度僕の番になったから、コインを入れてA定食を頼んだ。
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