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「俺がエッチで、シロはドスケベ。マサはむっつりスケベか。ーーーーよくぞ、揃った。だな」
辰さんが楽しげに僕の後ろを付いてくる。そのまた後ろを宝来さんが歩く。どうでもいいけど、もの凄く注目を浴びている。
まぁ、浴びてるのは、女装がやたらと似合う辰さんと、スーツ姿のイケメンの二人だけどね。
出来れば離れて欲しい。叶うなら他人のフリをしたいと思う僕は間違っていないよね。
「離れて歩いて下さい。話しかけないで」
「あんまりな言い草に、温和な俺も怒っちゃうぞ」
「僕は昔から目立ったり、注目を浴びたりするのが嫌いなんです」
「・・・昔から?ぬいぐるみなのに?」
え?僕は辰さんのツッコミに目を瞬いた。僕は今、なんて言った?僕はぬいぐるみで、もちろん子供達の注目を浴びていた・・・と、思う。
僕は気付いたら男の子に抱き締められていて、その子の家にいたからそれ以前の記憶は曖昧なんだ。
だからと言って知りたいとも思わない。僕はほんの少しだけモヤっとする気持ちを振り払い「辰さんは知らないんだろうけど」と、振り返った。
「ぬいぐるみにも色々タイプがあるんですよ。人と同じでね」
尻尾がゆらゆらと揺れる。どうだ参ったかと、得意げに見上げれば半笑いで返された。
何だよと、挑戦的な目で僕は辰さんを見返した。
「辰、シロに構うな」
見兼ねた宝来さんが助け舟を出してくれる。
「シロも相手にするな」
その言葉にムッとする。恋人を放置した宝来さんのせいなのに・・・と、僕はじとりとした目を宝来さんに向けた。
「だったら、痴話喧嘩に巻き込まないで下さい。迷惑です」
「・・・は?」
目を丸くする宝来さんが何だか面白いと思いながら、僕は怒った素ぶりで空いてる席へと向かった。
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