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その様子を訝しく思う僕の耳に「189~191のお客様~」と、再度アナウンスが流れた。僕は慌てて立ち上がり二人に向かって行きますよと、声を掛けて受け取り口に向かった。
食事をしている間、目の前に座る辰さんは少し気まずそうな顔をしていた。宝来さんはそんな辰さんを放っておいて、僕に何か言いたげな顔をしていたけど無視した。
だって、さっきの話なら本当に誰にも言うつもりはない。
話を蒸し返して念押しなんてされたら、宝来さんに信頼されてないんだって思っちゃうから。
確かに信頼関係は一朝一夕で築けるものじゃないと分かってはいるけど、バディになった僕を信じて欲しかった。
それに、そんなことよりも恋人へのフォローをちゃんとすればいいのにって、僕は食べながら思っていたんだ。
転生すればその縁が切れちゃうような関係だとしても、恋人にしたいと思うくらい好きになった相手に対して、余りにも冷たい態度だ。
「ごちそうさまでした」
僕は急いでご飯を食べると立ち上がった。
驚いた顔をする二人に「お先です」と告げて、返却口へと向かう。
宝来さんの呼び止める声は聞こえたけど、僕は聞こえないフリをした。僕が居るから話せないのなら、早々に立ち去るのが礼儀だよね。
それでも何となく気になって、チラリと後ろを振り返れば、二人仲良く話す姿が目に入る。お邪魔虫だったのは自覚してるけど、そんな姿を見せられたら、何だか寂しくて胸がズキンと痛んだ。
仲間外れにされたような気分だろうか。
昔、まだ僕がぬいぐるみだった頃に感じた思いに似ているような気がして、プルプルと頭を振ってそんな思いを打ち消した。
僕は二人から顔を背け食堂を後にした。
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