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午後からは10件の仕事をこなした。次から次へと容赦なく仕事を振る部長に(いつものことだけど)殺意が沸いた。
結局、あの事故での犠牲者は3人になってしまった。亡骸に縋り付き、悲しみにくれる家族の姿が切なかった。
死はどんな人にでも平等に訪れるものだけど、突然の死は、死した人も残された者も悲しみと後悔に囚われてしまう。いつ見ても胸苦しさを覚える。
僕達の仕事の定時は7時だけど、引き継ぎや何かでいつも帰れるのは8時を過ぎる。死にゆく人の魂をつつがなく回収するためには、死神は24時間働かなくてはならない。時間外だから待ってなんて言ってたら、大変な事態になってしまうからね。
だから、夜は交代での勤務になる。一週間ずつ昼と夜の勤務を交代して激務に勤しんでいるんだ。
タイムカードを押した僕に宝来さんが近付いてきた。
「お疲れ様でした」
「シロ、これから・・・」
宝来さんが何か言いかけたけど、僕の携帯の音がそれを遮った。僕は表示されている名前を見て「お先に失礼します」と、頭をおざなりに下げると、廊下に出て自販機のある休憩スペースに向かった。
「もしもし、お疲れ様です!」
勢い込んで喋る僕に、電話の向こうにいる人が苦笑する。
『お疲れ様。今、大丈夫?』
「はい」
もちろん大丈夫だ。例え、大丈夫じゃなくても、大丈夫にする。だってカオさんからの電話なのだから。
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