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人に殺意を持たれて殺された人は、恨みつらみから闇落ちしやすい。殺人をおかした人の中には、悪霊に取り憑かれた人もいるので、細心の注意が必要だ。
僕はチラリと隣を歩く宝来さんを窺う。真っ直ぐ前を向いて歩く宝来さんからは、何の感情も窺えなかった。元々、宝来さんは討伐に居た人で、怪我を負ってしまった為に、回収に異動になったと伝え聞いている。
本来、僕達回収には、悪霊化した魂を討伐する力はない。でも、宝来さんは違う。元々討伐にいて、前線で戦っていた人だから、もちろん力もある。
赤松さんはどうして牽制するようなことを言ったのだろう。だって、わざわざ言わなくても宝来さんだって分かっているはずだ。
もしかして、回収に異動になってからも、悪霊化した魂を、討伐しようとしたことがあるのだろうか。
部署間の役割はしっかりと線引きされる。回収は回収以外の仕事をすることは禁止されている。
宝来さんだって知っていると思うのに・・・。
じっと横目で窺いながら考え込む僕を、宝来さんが怪訝な表情を浮かべ覗き込んできた。
「どうした?シロ」
僕は聞いてもいいのかどうか迷ったけど、結局訊ねることにした。
「宝来さんは討伐に戻りたいの?」
「何故だ?」
「赤松さんが、宝来さんは回収なんだからって、わざわざ確認するかのように言ってたから・・・」
僕は語尾を曖昧に濁した。訊ねたのは僕なのに、答えを聞きたくないって思ってしまった。もし、討伐に戻りたいなんて言われたら、嫌だなって思ったんだ。
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