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全然打ち解けてくれなくて、会話も仕事に関することしかしない。でも僕は、この人が嫌いな訳じゃないから、寂しいと思うのはおかしくないよね?
「・・・そんな顔するな。自慢の尻尾がヘタってんぞ」
苦笑を伴う声が頭上から聞こえてきた。ポンと置かれた手が、優しく僕の頭を撫で、耳を擽るように触れてきた。
僕が擽ったくて耳をピクピク動かせば、耳の根元をまるでマッサージするかのように揉んでくる。その指の動きや強弱の付け方が絶妙で、すごく気持ち良かった。
僕はへにゃりと耳を倒す。
「気持ち良いか?」
低くて艶のある声に脳が痺れる。ゾクリと背筋が震えた。
僕はうっーと唸り声を上げ、宝来さんを見上げた。じっと見つめる目にドキリと鼓動が跳ねる。僕はそんな自分を誤魔化すように、頭をふるふると振った。
耳を手で押さえ「宝来さんのエッチ」と、恨みがましく睨み付ける。
「耳を触っただけで、えらい言われようだな」
苦笑を伴う声に「触り方がなんかやらしかった」と責める。
「そうか?マッサージしただけなんだがな」
惚けた声に、僕はぐるると唸った。不機嫌な顔をしてみせるけど、尻尾がゆらゆらと揺れて、宝来さんの長い脚にバッサバッサって音を立てて当たっているから、虚勢だってのはバレてると思う。
「ほら、着いたぞ」
宝来さんに促され、僕は備品庫に入った。結局、話は流れてしまって、宝来さんは僕の質問には答えてくれなかったんだ。
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