233人が本棚に入れています
本棚に追加
/153ページ
「森さん!」
「よう、シロ、宝来さんもお疲れさん」
「森さんも夜勤に入ったんですか?」
「ああ。今日からな」
ニッと笑い手招きされる。僕は首を捻りながら森さんの傍まで行くと、森さんはバサリと二着の服をカウンターに置いた。
「・・・これは?」
「今日、入荷したばっかの新作。俺の一押しだ」
得意げな森さんをキョトンと見つめる。
「・・・えと、それで?」
言わんとしている意味が分からなくて、首を傾げれば「きっとシロに似合うと思ってな、隠しておいたんだ」と笑った。
「こっちは宝来さんの服です。形は違いますが、同じ柄で作られた衣装になります。スーツもいいけど、きっとこれも似合うと思いますよ?」
「・・・神父?」
「そう」
「でも、神父は前からあったよね?」
「あれとは違うタイプの物だ。俺が直接見て決めた。とっておきだ。着るよな?絶対着るよな?」
怖いくらいに詰め寄られて僕は後ずさった。思わずコクコクと頷いてしまう。でも、絶対ひとりは嫌だから、宝来さんへと視線を向けた。
「宝来さんも着ますよね?」
「・・・いや、俺はスーツでいい」
「着ますよね?ね?」
必死な僕に戸惑いながらも、宝来さんは「いや・・・」と言葉を濁した。
「僕とお揃いで着て下さい」
「お揃い・・・?」
「はい」
頷く僕に思案する素振りを見せたあと、宝来さんは「分かった」と頷き、カウンターに置かれていた服を取り上げ試着室へと入っていった。
「さすがシロ」
何がさすがだか分からなかったけど、僕は残された服を手に取り、もう一つある試着室へと向かった。
最初のコメントを投稿しよう!