2

6/32

233人が本棚に入れています
本棚に追加
/153ページ
僕の服は神父と言うより、もろ死神といった衣装だった。体を覆い尽くす大きなマント。顔まで隠れそうなフード。首から掲げる銀のロザリオが唯一神父らしさを醸し出す。黒の生地には薔薇のスカしが入っていて重苦しさを軽減していた。 僕は鏡に映った僕の姿を、何だか複雑な顔をしながら見る。似合っているかどうかは、好みの問題だとしても、色白の肌にこの服は、何だか不健康そうにしか見えなくて、森さんには悪いけど違う服がいいなって思った。 試着室を出ると、既に服を着替え終えた宝来さんが、刀を抜き刀身を見つめていた。宝来さんの服は、つばの高い立襟に足首近くまである長衣。嵌められボタンは銀。宝来さんの髪の色とマッチして、強烈なアクセントになっている。その上から羽織るマントは僕のものより幾分か裾が絞られ、宝来さんのストイックな雰囲気を更に高めていた。 透かしで入った薔薇の花も、模様は同じなのに何だか全然違うものに見えた。 華やかさの中にある厳かさ。背徳的で禁欲的で、そして淫らだ。 無茶苦茶カッコイイんだけどね。 チラリと鋭い目を向けられ、僕はビクリと体を震わせ固まった。上から下までまるで舐めるように眺められて、益々動けなくなる。あまりの違いに羞恥さえ覚えてしまった。 「・・・あ、あの」 何とか声を絞り出すけど、声が掠れてしまう。そんな僕を見てフッと笑った。あの笑顔よりも数十倍も優しい目をして。 そんな顔を見せられて、思わずカァーと顔を赤くしてしまうのは仕方ないよね?しかも「似合ってる」なんて満足気に言われたら、そりゃ尻尾だってブンブン振りたくるよ。
/153ページ

最初のコメントを投稿しよう!

233人が本棚に入れています
本棚に追加