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「さて、厄介だな」 僕達は彼を送り届けたあと、またあの現場に戻って来ていた。宝来さんは渋い顔をして、彼女を見る。 彼女の半身は闇に覆われていた。時折、唸るように僕達を威嚇する。 「俺たちの姿も見えているようだな」 それは、かなり闇に侵されてしまっている証拠でもあった。このままだと彼女は、生きたまま魂を悪霊に喰われ、完全に闇落ちしてしまうだろう。 「討伐と浄化には?」 「連絡してあります。もうすぐ来られるはずです」 そうかと、宝来さんが頷く。赤松さんには浄化、討伐に任せて逃げろって言われていたのに、どうしてもこのまま逃げる気にはなれなかった。 「お待ちどうさま」 柔らかな声が背後から聞こえ、僕達は振り向いた。そこには、金色のカツラを被った女性が、ギリシャ神話に出てくる女神のような格好をして立っていた。手にしているのは、太陽の装飾が施された杖。たぶん、あれは自前なのだろう。 傍に立つのは、これまたギリシャ神話の男神のような出で立ちをした男。頭には月桂樹の葉で作った冠。手にはこれまた自前だろう杖。 黒い衣装に艶のある光沢。滑らかな布地が、これも特注で作られた衣装だと知れた。 「久しぶりね、雅親」 キラキラとした笑みを浮かべ、浄化係の高坂美耶さんが宝来さんを見つめる。その目に、独特な熱量を認めて、僕は嫌な気持ちになってしまった。
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