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大体、雅親だなんて呼び捨てにするなと言いたい。宝来さんの恋人は、辰さんなんだから、いくら色目を使ったって叶わないんだから。
僕はムスッとしそうになる顔を何とか宥めながら、高坂さんと宝来さん。男神の格好をした宮代晃さんを見ていた。
「元気そうだな、美耶。宮代も変わりないか?」
「ええ。雅親も元気そうで良かったわ。晃と良く雅親の話をしていたのよ」
「美耶は、いつお前が討伐に戻って来るのかって、そればっかだけどな」
「だって、仕方ないじゃない。討伐に居た頃は、一緒に働くことも多かったのに、回収に回された途端、会うことも話をすることもままならなくなったんですもの」
ホントに雅親は冷たいんだからと、高坂さんが拗ねたように唇を尖らせた。可愛い仕草なんだと思う。女性らしさを前面に押し出し、宝来さんを見つめる目はうるうると潤んでいる。
宝来さんの腕に触れようとした手を、僕は知らず払い落としていた。高坂さんは驚いたような顔をして僕を見る。僕自身もびっくりして、目を丸くしながら自分の手を見つめた。
宝来さんの顔は見れなかった。咄嗟に取ってしまった行動をどう思っただろうと思うと、怖くて顔を上げることが出来なかったんだ。
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