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「このワンちゃんは・・・知らないのか?」 「ああ」 色々訂正はしたいけど、僕は敢えてそのことは飲み込んだ。眉根を寄せて、二人を交互にみる。 「何だ、知らないんだ?」 高坂さんのバカにしたような声が癇に障る。憮然として睨み付ける僕をふふんと鼻で嗤った。 「やだ、心配して損しちゃった。晃、帰るわよ」 高坂さんは、またねと、宝来さんにウインクをひとつして帰って行った。 僕は、僕だけが知らない事実に何だか腹が立っていた。だって、僕は宝来さんのバディなのに。相棒なのに。どうして僕だけが知らないんだよって、責めるように宝来さんを見上げた。 「結界を張ります。お二方も退散願います」 綾さんの容赦のない声に、宝来さんが頷いた。 「行くぞ、シロ」 踵を返す宝来さんの背に「あとで連絡する」と、向井さんが声を掛ける。僕も二人に頭を下げると、宝来さんを追いかけた。 色々聞きたいことがあるのに、僕の前を歩くその背中が僕を拒絶しているように感じて何も聞けなくなる。 『俺のバディだ』って言われて優しい眼差しと、慈しむような笑顔を向けられた。 その時感じた嬉しい気持ちやドキドキした思いがどこか遠くに消えて行く。 高坂さんのバカにした顔が脳裏に浮かんで、僕はぎゅっと拳を握り締めていた。
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