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部署内に戻り赤松さんに経緯を報告をした。赤松さんはかなり渋い顔でため息をひとつ吐き出した。
立ち上がると、宝来さんを顎でしゃくる。
「シロは待機してろ」
二人で連れ立って出て行くのを見送った僕は、自分のデスクに戻った。
何の話をしているんだろう。僕は気になって、そわそわしてしまう。
宝来さんは秘密ばかりで、僕には片鱗さえも見せてくれない。他の人は知っているのに、僕には何も教えてくれない。
何でもかんでも話して欲しいって思っている訳じゃない。・・・そりゃ、話して貰えれば嬉しいけどさ。宝来さんを見てれば無理なのは分かってる。
でも、さっきや、今みたいにあからさまに仲間外れにされると、僕だって拗ねる。
『何だ知らないんだ』なんて鼻で嗤われたらすごく悔しい。
だって、本当はもっと宝来さんのことが知りたい。好きな物は何かとか、休日に何をしているだとか、そんな些細なことで構わないんだ。でも、それすらも教えて貰えないから寂しい。
もしかしたら僕は、宝来さんに信頼されていないのかな。
だから何も話して貰えないし、直ぐに仲間外れにされるの?
考えれば考えるほど、そうだとしか思えなくて、僕は唇を噛み締めた。
そんなことはないって必死に思おうとするのに、疑惑と疑念に囚われて抜け出せなくなっていく。
僕はそんな自分に嫌気がさしてデスクに突っ伏した。これじゃあ僕が宝来さんを信じてないみたいだ。
気分を変える為に、僕はだらりと垂れた尻尾を掴み胸に抱き締めた。ふわふわとした真っ白な毛が僕の頬を擽る。柔らかな毛並みに顔を埋めて、大きく息を吐き出した。
家でひとり孤独を感じて落ち込んだ時、自己嫌悪でどうにかなってしまいそうな時も、尻尾を抱き締めればそれだけで、安心した。
なのに、更に憂鬱になる心を持て余す。誰か助けてと、声にならない声を上げていた。
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