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どのくらい時間が過ぎただろうか、突っ伏したままの僕の耳に「シロ・・・?」と、少し戸惑う声が届いた。 宝来さんの声だと直ぐに分かった。こんな格好をしていたら、仕事中に寝てると思われてしまうと焦った僕は、顔を上げようとして自分の体がピクリとも動かないことに気付いた。 「シロ、どうしたんだ?」 「どうした宝来」 心配気な宝来さんの声と、赤松さんの声が聞こえる。ヤバイ。部長代理だと、気持ちは焦るのに体は言うことを聞いてくれない。 「もしかしたら悪霊に当てられたのかもしれないな」 冷静に僕の状態を分析する赤松さんの声に、僕は妙に納得する。不安に苛まれ負の感情から抜け出せなかった理由が分かってホッとしたんだ。 「医務室に連れて行ってやれ。今日はこのまま二人とも休みでいい。ただでさえ人手が足りないってのに、倒れられたらコトだからな」 「分かりました」 「お前さんも・・・大丈夫だったからと言って過信するなよ?二人共、ゆっくり休め。これは業務命令だからな」 「はい」 宝来さんも、どこか不調があったのかな。でも、大丈夫だったのなら良かった。僕がそんなことを考えていると、ふわりと体が浮き上がる感じがした。 「このまま運んで行きます」 「ああ、そうしてやれ」 あれ?これって、宝来さんに抱き上げられているんだろうか。重くないのかな。なんか恥ずかしいな。 でも、嬉しい。 体に感じる宝来さんの温もりが、僕の中に巣食っていた負の感情を溶かしていく。出来るだけ振動を与えないように、ゆっくりと歩いてくれる心配りが何だか擽ったくて僕の頬が緩んだ。
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