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「シロ・・・動けるのか?」
密めた声に、にへらと笑う。だらしない顔をしてる自覚はあったけど、どうにも止められなかった。
「・・・どっちなんだ?あんまり可愛い顔してっと襲うぞ」
僕はその言葉にビックリして、思わずパチリと目を開けた。じっと見つめる目と目がかち合い、ドキリと心臓が跳ねる。
「やっぱり動けるようになってるみたいだな」
「・・・あーー、そうなのかな?」
僕は視線を彷徨わせ曖昧な返事を返した。
「今はどうだ?」
真剣な声音に問い返され、僕は腕を持ち上げてみた。
「動いた」
「そうか。でも一度診て貰った方がいいな」
「・・・大丈夫だよ?」
「シロは今まで悪霊化された奴に遭ったことはあるのか?」
「ううん、ない。カオさんがそういうのを察知するのがとても上手だったんだ。危なそうな場所には、僕を近寄らせないようにしてくれてたし、どうしようもない場合は、直ぐに浄化と討伐に連絡してた」
だから僕は、あんな悪意の塊のような魂を見たのは初めてだった。
「ーーそうか。シロ、奴らの吐き出す毒を甘くみない方がいい」
「・・・吐き出す毒?」
「ああ、恨み言や負の感情をモロに浴びると、訓練をされてない魂は直ぐに取り込まれてしまう。討伐や浄化の連中は特別な訓練を受けるからな。ある程度は耐性が付いている。赤松さんが言ってたろ?ヤバければ逃げろって。あれはそう言う意味だ」
「じゃあ、宝来さんも耐性があるの?」
「俺は・・・」
宝来さんは口籠り、一瞬の間のあと「そうだな」と頷いた。
「俺も討伐から遠ざかって大分と経っているから、耐性は弱くなっていると思うが、シロよりはマシだと思う」
そう言ってニヤリと笑う。宝来さんが動けなくなった僕を揶揄った。
僕はムッと口を尖らせながらも、宝来さんが誤魔化した妙な間が気になっていた。でも聞き返すことは出来なくて、気付かないフリをすることにしたんだ。
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