233人が本棚に入れています
本棚に追加
/153ページ
「体が動くようになったから、自分で歩けます」
だから降ろして下さいと、お願いしたのに「いや、このまま運んで行く」と、断られた。
「重いでしょ?」
「いや、軽すぎだ。シロはもっと肉を食べて太った方がいい」
それはカオさんにも良く言われてた。
『シロは痩せ過ぎなんだからもっと食べなさい』って。
「疲労は魂にも負担が掛かる。体力を付ける為にも一杯食え」
ぶっきらぼうな言い方だったけど、本気で心配してくれているのは分かった。僕は照れくさくて、でも嬉しくてエヘヘと笑う。
「シロ・・・尻尾を振るな。痛えよ」
バシバシと宝来さんの体を、僕の尻尾が叩いていた。苦情が出たから何とかしたかったけど、僕にはどうすることも出来なかった。
医務室の先生は、背が高く目鼻立ちの整った美人さんだ。白衣を羽織った姿はまるで天使のようで、彼女会いたさに通い詰める人もいるらしい。
でも、中身は下品なサディストで、見た目に騙され迷い込んだ子羊を美味しくいただいている・・・らしい。
これは全部カオさん情報だから、本当のことは分からないんだけど、カオさんと先生は仲良しだから多分本当だ。
「あら、マサ。忘れ物?・・・あら、あら、カオのお気に入り君じゃないの。手なんか出したら殺されるわよ?」
「話はつけてある。何の問題もない」
・・・話はつけてる?僕は意味が分からなくて問いただす目を宝来さんに向けた。無視されたけど。
「へえ?粘り勝ちって奴ね。でも、ここでコトに及ぶのは勘弁してくれるかな」
「違う。こいつは今、俺のバディだ」
「ああ、そっか。そうだったわね。・・・なるほど、分かったわ。そこのベットに寝かせて」
俺のバディだけで意味が通じたらしく、先生は頷くと診察台の上を指差した。
最初のコメントを投稿しよう!