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うつらうつらとした僕の耳に、宝来さんと先生の会話が聞こえてきた。
「ーーはあなたとは違うのよ?もっと注意を払ってあげなきゃ」
「過信した。平気な顔をしてるから大丈夫だと思ったんだ」
「大丈夫な訳がないでしょ。それはマサが一番良く分かっているはずでしょ?」
「反省している」
「・・・まさか」
二人の声が途切れた。でもしばらくすると、先生がため息を吐き出す。
「まあ、いいわ。今回は大事に至らなかったけど、これからはもっと注意して上げてね」
「分かった」
まだぼんやりとしてたけど、僕のせいで、宝来さんが先生に責められていることだけは分かった。
宝来さんは悪くない。悪いのも過信したのも僕だ。
カオさんにも悪霊には気をつけろって口が酸っぱくなるくらい言われていたのに。
「ーーで?上手くやってるの?」
「ああ。問題ない」
「聞いた時はびっくりしたけど・・・ホントに本気なんだ。あんたがマジ惚れとは驚きよ」
「ほっとけ」
「この朴念仁がねぇ」
「あのなぁ」
「しっ、大きな声を出さないの。シロくんが起きちゃうでしょ」
「・・・悪い」
宝来さんが僕を窺う気配と共に、小さな謝罪の声も聞こえてきた。
最初は僕の話だったのに、いつの間にか辰さんのことに話題が変わっていたようだ。僕は立てていた耳を倒した。
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