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「先に風呂に入れ。シャワーで済ませるんじゃないぞ?ちゃんと湯槽に浸かるんだ」 「じゃあ、宝来さんが先に入って下さい。僕が入ると毛が浮くから、あとにします」 「・・・気にするなって言っても気にするんだろうな」 苦笑混じりの声に頷いた。 「分かった。先に入って来るからのんびりしてろ」 そう言って宝来さんはリビングを出て行った。ひとり残された僕は貰ったお茶を飲んで、キョトキョトと辺りを見渡す。あまり動き回らない方がいいよなって思いながら視線を巡らせていると、大きなベッドの上にちょこんと乗っている物に目を引かれた。 僕の記憶によれば、あれは『犬のぬいぐるみ』だけど、宝来さんとぬいぐるみが何だか結び付かなくて首を傾げる。 立ち上がりベッドまで歩いていく。 少し薄汚れたように見えるのは、この子の元々の色がそんな色だからなのかな。灰色っぽい色をしたぬいぐるみは、目が黒いボタンで縫い付けられていて、所々縫い直されていた。すごく大事にされているのが分かった。 僕に似てるって思ったけど、僕の毛は真っ白だし、目はフェルトで付けられていた。(取れてなくなってたけど)もっとボロボロで傷みが激しかったから、僕じゃないって分かっているんだけど、何だか懐かしくて僕は思わずその子を手に取って抱き締めていた。 ふわふわの毛に顔を埋め匂いを嗅いだ途端、僕の意識がプツリと途絶えた。
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