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翌朝、宝来さんは僕のために朝食を作ってくれるらしい。何が食べたいって聞かれたから「ホットケーキ」って答えたら一瞬、固まってたけど、分かったって言って、わざわざ材料を買いに行ってくれた。
その間に僕はお風呂を借りた。着替えがなかったから、宝来さんの服を借りようと思った。でも、あまりにも体格が違い過ぎて止めた。まるで、子供が大人の服を着ているような感じだったから。
僕は脱いだ服をそのまま着て浴室を出た。宝来さんはまだ帰ってなくて、僕は尻尾を抱えてラグの上に座った。
「他人様の部屋にひとりって居たたまれないや」
家主が居ないのに、あまりウロウロと動き回るのもどうかと思うから身動きが取れなくなる。退屈を紛らわせるために尻尾を動かして戯れてみるけど、直ぐに飽きた。
ふと、視線がベッドに引きつけられた。さっきまで眠っていたそこには、掛け布団がかけられている。何かが足りないような気がして、僕は立ち上がりフラフラと歩いて行った。
あの時・・・宝来さんがお風呂に入っていた。僕はベッドの上に何かを見つけた。
布団を上から撫でてみる。ぺちゃんこに潰れて何も入ってはいなかった。
ゆうらりと尻尾を揺らす。僕はじっとその場を見つめ記憶を掘り起こしていた。
「まだ、寝たりないのか?眠いなら寝てていいぞ」
僕は突然背後からかけられた声にビクリと体を震わせた。
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