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宝来さんの作ってくれたホットケーキは、バターに蜂蜜を垂らしたシンプルな物で、端は焦げてるし裏返す時に失敗したのか、形も歪だったけど今まで食べた中で一番美味しかった。
「すごく美味しい。宝来さんてば料理の天才」
僕はあまりの美味しさに、緩む口が止められない。尻尾をブンブンと振りたくりながら頬張った。
「専用の粉を使ったから誰が作っても同じ味だ」
少し照れたように見えるのは僕の気のせいかな?
「そんなことないよ。僕が作ったらきっとこんなにも美味しくならなかった」
「お前は料理もダメなのか?」
僕はうっと言葉に詰まる。
「だって、仕方ないよね?僕はぬいぐるみだったんだもの。料理も掃除もしたことないんだから」
むしろ、掃除はしまう側じゃなくて、しまわれる側だったんだから。
「なるほど?」
苦笑混じりに納得されて、僕は気まずさを誤魔化すようにホットケーキを飲み込んだ。
朝食を食べたあと、僕は後片付けを申し出たんだけど断られた。でもと、言い募る僕に「今日はいい。また今度来た時は頼む」と、次回を約束する言葉で遮る。
僕はそれが嬉しくて大きく尻尾を振った。
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