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昼前に宝来さんのマンションを出た僕は電車に乗って、自分の住む街へと帰ってきた。改札を出て直ぐに、携帯が鳴った。表示された名前を見て僕は慌てて電話に出る。
「もしもしっ」
『どうしたの、そんなに慌てて』
勢い込む僕に、カオさんが苦笑しているのが分かった。だって仕方ないよね?カオさんからの電話は、宝来さんとバディを組むと知らされた日に掛かって来て以来なんだから。
僕から何度も電話をかけたいって思ったけど、カオさんの今の状況を鑑みればそんなことも出来なくて、便りのないのは元気な証拠と思うことにしていた。
そのカオさんからの電話なんだもん。そりゃ、慌てるよ。
「カオさんこそどうしたの?何かあったの?僕に出来ることはある?」
『ちょっと、シロ。落ち着きなさい』
「だって、突然カオさんから電話なんて・・・」
僕の脳裏を最悪な事態が過った。でも、例え何があっても僕だけはカオさんの味方だ。
『何もないわよ。あんたのことでさっき頼子に連絡を貰ったもんだから急いで電話したのよ。全く、もっと早くに電話を寄越せばいいのに』
カオさんが怒った声でぶつぶつと文句を言うのを、僕は首を傾げながら遮った。
「・・・頼子?誰ですか、それ」
『昨日、診察して貰ったでしょ?背の高い美人なお姉さんよ』
僕は医務室の先生を思い浮かべた。
「あの先生、頼子さんて言うんですね」
そういえば名前を聞くのを忘れてた。
『そうよ。あいつからシロが悪霊に少し入り込まれたみたいだって聞いて、しかも悪霊より厄介な宝来の家に泊まったんじゃないかなんて聞かされたら、心配にもなるじゃない』
悪霊より厄介な宝来さん?僕はカオさんが宝来さんを悪く言うのが嫌で、そんなことはないと否定した。
「宝来さんは厄介な人じゃないですよ?」
むしろ、厄介を掛けたのは僕の方だ。
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