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『野獣の筋肉バカに何もされなかった?』 「野獣の筋肉バカって・・・宝来さんのことですか?」 『そう』 宝来さんは鍛え抜かれた逞しい身体をしているけど、野獣でも筋肉バカでもないと思う。 「すごく気を遣って貰いましたよ?朝はホットケーキ作って貰ったし。優しくて良い人です」 思い出しただけで、あの甘い匂いと少しだけ焦げたホットケーキを思い出す。すごく美味しくて幸せの味がした。また作ってくれるといいな。 『あんた、ホットケーキ好きだもんね』 「はい」 『美味しかった?』 「すごく美味しかったです」 『・・・シロ、だから良い人なんですって言ったら怒るからね。食べ物で懐柔されてんじゃないわよ?』 「別に、そんなんじゃないですよ?宝来さんと一緒に仕事して、宝来さんが見た目ほど怖い人じゃないって分かって、不器用だけど優しい人なんだなって思ったんです」 綺麗な部屋の中で萎縮する僕に、掃除すればいいだけだと、何でもないように言ってくれた宝来さんの優しさが嬉しかった。 恥ずかしかったけど、一緒のお布団で抱き締めて眠ってくれたのも、守られているような気がして、温もりに安心した。 宝来さんはすごく暖かい人だと思う。モテるのも、心の底から納得だ。だから本当に辰さんが羨ましい。 モヤモヤとした思いが沸き起こる胸を押さえた。 「僕は宝来さんと仲良くやっているので、大丈夫です。カオさんにあまり心配かけないように僕も精一杯頑張ります。だから、カオさんは気持ちを休めて療養することだけを考えてください。僕は早くカオさんに会いたい。復帰してくれるのを待ってますから」 でも、カオさんが復帰したら僕は宝来とのバディを解消されるのかな。カオさんには早く戻って来て欲しいけど、それは何だかイヤだなって思った。
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