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対象者の名前は松波翔太。16歳。車輪がくるくる回る様子を呆然と見ている顔は、どこかあどけない。 「松波翔太さんですか」 僕の声に、彼はピクリと体を震わせた。どことなく怯えたように見えるのは気のせいだろうか。その目が僕たちを捉えた途端、大きく見開かれる。 僕はニッコリと笑みを浮かべ彼に話しかけた。最初の印象が大切だからね。 「初めまして。僕はシロ。彼は宝来といいます。あなたを迎えに来ました」 「・・・コスプレ?」 「え?」 「それ・・・」 僕は指を刺され、自分の姿を見下ろした。僕は死神。宝来さんは神父。コスプレと言われても仕方ないかも。 「ああ、コスプレっていうか・・・えと、僕たち死神なんです」 僕の言葉に彼は眉を顰め、不審げな眼差しを向けた。 「・・・死神?何それ。意味が分かんねーし。それより、あれどうしよ。先輩に借りてたバイクなんだよな。弁償ったって、金ないし、どやされるよな。・・・ホント、トホホだよ」 「それは、松波さんは考えなくてもいいんじゃないかな」 亡くなったあとのことは、生きている人の仕事だ。 「はぁ?どういう意味だよ。お前、おれが自分のやらかしたことに尻尾を巻いて逃げる奴だって言いたいのかよ」 ジロリと睨み付けられ、僕は後ずさる。 「ち、違います」 慌てて首を振るけど、松波さんは納得しない。どうしようと困っている僕の前に、宝来さんが庇うように立ちはだかってくれた。
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