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「な、何だよ。神父のコスプレしてるクセに、あんた妙な迫力あるな」 「お前は死んだんだ。死んだあとのことを気にしても仕方ないだろ」 「は?」 「スピードの出たバイクに振り落とされて、頭と全身を強く打って即死だ」 宝来さんが見ろと、倒れている亡骸へと目を向けた。彼は真っ赤な血の海の中で倒れている自分の姿を見て息を呑んだ。 「・・・俺、死んだ?」 「ああ」 「何で?」 「無茶な運転の結果だな」 「宝来さん」 あまりにも直裁な言葉に、僕は焦って宝来さんの服を掴んだ。 「・・・大丈夫ですか?」 青ざめた顔をした松波さんに声を掛けた。 「・・・っ!」 彼は何かを堪えるようにグッと唇を噛み締める。目を閉じて動かない彼の背中にそっと触れた。体が怯えたようにビクッと震えるから、大丈夫ですよと声を掛けながら摩った。 やがて静かに息を吐き出し、松波さんの体から力が抜けて行く。 「・・・らしいよな。おれいつも、ここぞという時にヘマするんだ。高校の受験の時もそう。初めて好きになった女に告白した時もやらかした。ここ一番、気張らなきゃって思う時に限ってやらかして、最後は事故って死ぬとか・・・バカみてえ」 「もし、この世にやり残したことがあるなら、お手伝いしますよ」 悲しむ彼を何とか慰めてあげたくて、そう彼に告げた。 与えられた時間は24時間しかないけれど、少しでも憂いをなくしてもらいたいから。
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