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「やり残したこと・・・?」
男は思案する素ぶりを見せたあと、何もないと小さく呟いた。
「やりたいことも、やり残したこともない。・・・毎日楽しければ良かったんだ。仲間とバカ騒ぎして、バイク乗り回して、時々女食って・・・おれ、本当に何にもないや」
呆然とした様子で自分の手を見つめる。
「では、このままあの世に向かいますが、よろしいですか?」
「いやだって言っても、連れて行くんだろ?」
「はい。魂のままこの世に留まるのは、松波さんにとって良くないですから」
肉体を失った魂は、不安定になりやすい。負の感情に囚われて、いずれは悪霊へと姿を変えてしまう。
「・・・願い事叶えてくれるんだよな?」
「願い事を叶えるというのとは、少し違います。松波さんが生前、やり残したことをやり遂げられるようにサポートさせて貰うんです」
「なんだ・・・大金持ちになったり、世界中の綺麗なお姉さんを侍らせたり出来ねーの?」
「それが、未練なんですか?」
「いや、違うけど・・・」
彼はそう言うと、ハァーとため息を吐き出した。
何だか落ち込んでいるように見えて、僕は首を傾げた。
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