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僕の家のベットはシングルで、ひとりで寝るには十分な広さなんだけど、ふたりだとかなり狭い。ましてや、宝来さんは190を超える長身で、ガッチリ体型だ。狭いなんてもんじゃない。 そんなベットの中で、僕は宝来さんに抱き締められ、ピッタリと密着した状態で眠る羽目になった。布団の予備なんてないし、床には服が散乱しているから、仕方ないと言えば仕方ないのかもしれない。 宝来さんの腕の中は、安心出来ると僕の体や心は学んだらしいから、かなりドキドキするけど、イヤな訳じゃない。 でも、宝来さんは辛いんじゃないかなって思うんだ。どう見ても、ベットから足ははみ出しているし、掛け布団は僕がほとんど被っている。 大きな体をちまっとさせているさまは、何だか物悲しくもあった。 「宝来さん、僕、下で寝ますよ?」 「気にするな。大丈夫だ」 何度目かになるセリフを口にする僕に、宝来さんも同じ言葉を返してくる。 いや、だから大丈夫に見えないから言ってんだけど、とは言えなかった。だって、顔を向けた僕に、宝来さんの目が、これ以上何か言ったら承知しないぞって、伝えて来ていたから。 それに、こうやって温もりを分け与えてくれる寝方は本当は嬉しかったから、何も言えなかったんだ。 しばらくすると、宝来さんの寝息が聞こえてきた。この体勢で寝られたんだ。凄いなって思いながら、僕は身動ぎした。ほんの少し顔を上げて宝来さんの顔を除き込む。 「まつ毛長い」 鋭い目が閉じられているだけで、宝来さんを纏う雰囲気が柔らかくなっていた。精悍な面立ちは変わらないのに、不思議に思う。 僕はそっと手を伸ばし、宝来さんの頬に触れた。少しザリザリしたところはあったけど、滑らかな肌が心地良かった。
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