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耳をそばだてて宝来さんの気配を探る。規則正しい穏やかな寝息に勇気を貰い、僕の行動はどんどん大胆になって行った。 頬に触れていた手を髪の毛に伸ばす。銀色に光るサラサラの髪に触れてみたいと思っていた。頭を撫でて、耳に触れ、唇を突いた。弾力のある唇をムニムニと弄っていると、いつの間にか目を覚ましていた宝来さんに手を掴まれた。 「あっ・・・」 「あっじゃねーよ。何、人の顔で遊んでるんだ」 ジロリと睨まれ首を竦めた。 「ごめんなさい」 「たくっ、誘われてんのかと思ったら」 僕が悪さをしないように抱き込みながら、宝来さんが小さく呟く。聞き取れなくて、え?と聞き返す僕に「いいから寝ろ」と言って教えてはくれなかったけど。 僕は宝来さんの腕の中でモゾモゾと体を動かし、寝やすい位置を確保すると、大人しく目を閉じた。 何だか幸せな夢が見られそうな、そんな気がした。 その日見た夢はとっても変な夢だった。 僕はものすごくワガママな王子様になって、家来の宝来さんに無理難題を押し付けるんだ。でも、宝来さんはスーパー家来だから、どんな難しいこともいとも簡単にやり遂げてみせる。 僕が地団駄踏んで悔しがる様子を、ほんの少し意地悪な顔して、スーパー家来の宝来さんが見てる。 だから僕はこれだったら無理だろってのを必死に考えて宝来さんに言ったんだ。 『僕を誰よりも愛せ。そして、お前が今付き合っている辰と別れるんだ』 言いながら、きっと無理だって言われるに違いないって僕は思ってたのに、宝来さんは『かしこまりました』って頭を下げた。 『ずっと、お前だけを愛してやるよ』 そして宝来さんは本当に辰さんと別れて、僕だけを愛してくれた。僕はこれが夢だと分かっていて、夢の中の僕をいいなって、羨ましく思ったんだ。 僕も宝来さんに、僕だけを愛して貰いたい。
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