――第3章――

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「……あまり他の奴の前で笑うんじゃないぞ」 「え……?」  一瞬何のことだか分からず呆けていると、「分からないか」と彼は呟いた。 「……人前で笑い者にするなという意味ですか? それなら――」  もちろん笑ったりなんかしないと頷きかける……。 「そうじゃない。お前が他人を笑い飛ばすような性格じゃないのは分かってる。お前の笑顔が問題なんだ」 「……?」  さっぱり意味が分からない。と、眉を寄せてギルを見る。 「素で笑うと、お前は可愛いからな。あまり人には見せたくない」  また不可解な単語が出てきて、晴人はポカンと口を開けた。 (かわ………いい……?)  理解するまでに数秒かかってしまった。  どう反応したら良いのか分からず嫌な汗が噴き出る。  変に熱を感じる顔は、きっと赤くなっていることだろう。  ギルと目を合わせていられなくなり、咄嗟に窓の外に顔を向けた。 「何なんですか、それ……っ。素で笑うとって、意味が分かりません」  思わず言葉が尖ってしまい、若干の自己嫌悪に陥るが、そんなことに悩んでいるほど今は心に余裕などない。 「それは、愛想笑いとか他人に合わせた笑顔以外って意味だ。もちろん、どの表情も好きだが、さっきのはどこかグッときた」  律儀に説明されなくても意味くらいは分かっている。照れを隠す為に敢えて言ったにすぎない。
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