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「……あまり他の奴の前で笑うんじゃないぞ」
「え……?」
一瞬何のことだか分からず呆けていると、「分からないか」と彼は呟いた。
「……人前で笑い者にするなという意味ですか? それなら――」
もちろん笑ったりなんかしないと頷きかける……。
「そうじゃない。お前が他人を笑い飛ばすような性格じゃないのは分かってる。お前の笑顔が問題なんだ」
「……?」
さっぱり意味が分からない。と、眉を寄せてギルを見る。
「素で笑うと、お前は可愛いからな。あまり人には見せたくない」
また不可解な単語が出てきて、晴人はポカンと口を開けた。
(かわ………いい……?)
理解するまでに数秒かかってしまった。
どう反応したら良いのか分からず嫌な汗が噴き出る。
変に熱を感じる顔は、きっと赤くなっていることだろう。
ギルと目を合わせていられなくなり、咄嗟に窓の外に顔を向けた。
「何なんですか、それ……っ。素で笑うとって、意味が分かりません」
思わず言葉が尖ってしまい、若干の自己嫌悪に陥るが、そんなことに悩んでいるほど今は心に余裕などない。
「それは、愛想笑いとか他人に合わせた笑顔以外って意味だ。もちろん、どの表情も好きだが、さっきのはどこかグッときた」
律儀に説明されなくても意味くらいは分かっている。照れを隠す為に敢えて言ったにすぎない。
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