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青い空、青い海、白い砂浜。
どこかで聞いたようなフレーズが、今まさに自分の目の前に広がっている。
待たせたなロサンゼルスッ!――なんていうはっちゃけたテンションには元々なれない性格だが、今は拍車を掛けて気分が重かった。
手元のメモを見ながら、可知晴人は歩き続けていた。
来た道を振り返っては首を傾げる。
どうやら道に迷ったらしい。
27にもなって迷子だなんて……。
途方に暮れていても仕方がない。ここは初めて降り立った異国の地なのだから。
自分にそう鼓舞して前を向く。
行き交う人も人種の違う観光客が多く、誰に尋ねたら良いのやら……。
「この辺りなのは確かなんだけど……」
やはりバスではなくタクシーで来れば良かっただろうかと今更ながら後悔した。
ビーチの見える道から外れ、ココに住んでいそうな人物を探す。
「この近く……かな?」
少し歩くと建物が密集した場所に出た。
しかし、似たような家やアパートが多過ぎて、どれが目的の建物か直ぐには判断できなかった。
大通りが見えてきたところで、晴人は住所を確認しながら道に沿って右に曲がる――。
「わっ! ……す、すみません……じゃなかったっ。ソーリーッ」
突然襲った身体への衝撃に後ろへ数歩よろめきながらもバランスを取り、慌てて謝罪を口にするもここは日本じゃないことを思い出し言い直す。
一瞬メモに気を取られていた晴人は同じように道を曲がって来た人物とぶつかってしまったようだ。
【……いや。怪我はないか?】
自分の頭上、10センチ以上高い位置から声が降って来た。
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