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「へぇ、それは不思議な人だね。じゃあ、君がさっき言ってた浮世離れした人は?」
「え?」
男性がニコニコしながら聞いてくる。よくよく見るとこの人も川端さんに似ているかもしれない。一見、明るく見えて、腹に一物抱えていそうなところが。ただ、この人のほうがまだ川端さんよりは怖くない。そもそも人を例えるのに神様を持ってくる行為自体が間違っているのかもしれないけど。この人は幸人さんの知り合いなのか?
「そうですね。浮世離れしていて、傲慢で自分に対して自信満々で。でも」
「でも?」
「とても優しい人です」
「そっか、君とは意見が合うね」
「えっと」
男性の言葉に戸惑っていると、店の表の扉が勢いよく開いた。男性の姿の後ろに人が映る。
「計算通り」
男性は先ほどの表情を消して言ったかと思うと、次の瞬間では、もう笑顔だった。そして、ずんずん歩いてきて、その男性の頭をわしづかみにしようとする幸人さんの手首を素早くつかみ、幸人さんを見てさらに笑みを深めた。
「幸人、久しぶり」
「何度、お前は名前を呼び捨てにするなと言ったらわかる!」
そういい、幸人さんは自分の手首をつかんでいる男性の腕を勢いよく取り、自分のほうにためらいもなく引き、投げた。
「え!?あ、えっと」
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