第一章

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幸人さんの腕の力がどんどん弱くなっていくのを感じ、私は腕を外した。幸人さんの顔を恐る恐る見るといつも通りの表情に戻っていた。 「それにしても、想像以上だったよ。君の名前はなんていうの?」 男性のお客さんがニコニコしながら聞いてくる。 「木戸、咲良です」 「いい名前だね」 「ありがとうございます。お客様の名前は?」 「俺?俺は山田俊」 「俊さんですか?」 「うん」 「それで?お前は何のつもりだ?」 幸人さんのとげとげしい声が響く。 「どういうつもりというと?」 「とぼけるな」 「そんな怖い顔するなよ、幸人。ちょっと実験してみただけじゃないか」 「実験?」 私がつぶやくと、お客さんはにこにこしたまま言った。 「君を使ってね」 「私?」 「うん」 「幸人がどんな反応するのか気になって」 「え、え?」 男性はにこにこしつつ、目は笑わずにかすかに表情を変化させて言う。 「君は全く気付かなかったね。俺はね、君と話している間ずっと」     
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