第一章

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ここに来てから人を怖いと思うことが多い気がする。コーヒーを入れながらぼーっと考える。そういえば、実験って何だったんだろう?幸人さんが私の原稿用紙でたたいたせいで有耶無耶になったんだよね。私がいてるときに何かしたって俊さんは言ってたけど。あれこれ考えているうちにコーヒーを淹れ終わり、幸人さんのもとに持っていく。 「コーヒー淹れ終わりました」 幸人さんは眉間にしわが寄った状態で、俊さんはたいへん生き生きした状態で振り返った。 「咲良ちゃんありがとうー。このコーヒー、咲良ちゃん淹れたの?おいしいねー」 俊さんはにこにこしながらコーヒーを口に含む。そこには先ほど感じた違和感や恐ろしさはみじんもない。勘違いだったのかと思うほどだ。 「ありがとうございます。幸人さんから教わったんです」 「へぇ、そうなんだ。幸人がねぇ」 幸人さんは俊さんの視線を受けてさらに眉間のしわを深めた。 「なんだ?」 「ん?意外だなと思っただけだよ」 「馬鹿馬鹿しいな。お前は俺を意外だと断じられるだけのものを持っていないだろう」 「幸人は相変わらずひどいな。そんなこと言われたら俺傷ついちゃうよ?」 「そうか」     
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