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プロローグ
私は学校から家までの電車の中で桜を見ていた。サクラサク。本当にその状況になってよかったなと電車の窓際で一息落とした。私が合格発表当日、私のバイト先であり、私が眠りやと名付けたところへ行き、結果を伝えたあの日のことを一か月経った今でも鮮明に思い出す。
「結果は、合格、しました」
そういった瞬間に自分の体の力がどっと抜けていく。幸人さんのほうを見てみると、幸人さんは背もたれにもたれかかっていた。川端さんはいつも通りの笑みを浮かべている。
「それはよかったね。咲良さん」
「はい」
「咲良さん、これ合格祝い&入学祝いとして」
そうして川端さんに包装紙で包まれた何かを渡された。
「重いから気を付けてね」
川端さんが私が差し出した両手にそれを置く。
「重っ!」
私の両手ではなかなか持ち上げるのに力のいる重さだ。耐えきれなくなり、机の上に置くと、机がどんっと音を立てた。
「川端さん、まずは合格祝いありがとうございます。これは何ですか?」
「開けてみるといいよ」
そういわれ、私は包装紙のテープが張ってある部分から慎重に外して開けていく。そうすると茶色の皮でできた四角い入れ物が出てきた。
「入れ物?」
「さらに中開けてみて」
「はい」
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