第一章

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お互い顔を見合せたまま、黙る。 「幸人さん。質問いいですか?」 「内容にもよるが」 答えるかどうかは約束しないってことか。私は了承の意味も込めて頷くと、口を開いた。 「確認なんですけど、幸人さんは俊さんのことを友人だとは思っていないんですよね?」 「あぁ」 「なのにメールアドレスは持っている」 「そうだな」 「しかも連絡を取り合う関係」 「ちょっと待て、小娘。それは語弊がある」 私は首を傾げた。 「俺とあいつは連絡を取り合ってはいない。あいつがいつも一方的に連絡をよこしてくるだけだ」 それも連絡とっているといえると思うけどな。そういうと幸人さんが反論してくることは分かっているので心の中で思うだけに留める。 「そうなんですね。なら、なんでメールアドレスを交換したんですか?」 「それはだな」 幸人さんが言いにくそうに言葉を濁す。 「言いたくないのなら言わなくても大丈夫ですよ」 大学生になってから、幸人さんのことを知りたいという気持ちは以前より少しは出てきたが、それもほんの少しだけなので本人が嫌がっているのを見てまで知りたいとは思わない。     
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